ただ、それだけでよかったんです

 第22回電撃小説大賞大賞受賞作品。

 

 ただただタイトルに惹かれて本屋で衝動買いしてしまった作品です。電撃作品と思えないようなタイトルに惹かれました。あらすじは

 ある中学校で、一人の男子生徒Kが自殺した。『菅原拓は悪魔だ』という遺書を残して――。自殺の背景には、「悪魔のような中学生」菅原拓による、Kを含め た4人の生徒へのイジメがあったという。だが、菅原拓スクールカースト最下位の地味な生徒で、Kは人気者の天才少年。イジメの目撃者が誰一人もいないこ と、彼らの接触の証拠も一切なかったことなど、多くの謎が残された。なぜKは自殺するまで追い詰められたのか。そこには驚愕の真実が隠されていた。

公式サイトより引用

 

 物語は自殺した中学生「岸谷昌也」の姉「香苗」と加害者とされる少年「菅原拓」の双方の視点から描かれています。

 面白いと感じたのは彼らの中学校で実施される特殊な教育プログラム「人間力テスト」。このテストに一喜一憂し翻弄される姿は正直怖いなと感じました。それに加え家庭環境、マスコミ、ソーシャルネットワークという要素が加わり現代社会をこれでもかと皮肉る内容にお話を読む手が止まりませんでした。

 後半に向かうにつれて描かれる完璧と思われていた昌也の悩みや、底辺の人間と思われていた拓の強さ。そういったキャラクター達の「人間らしさ」が魅力的に描かれた作品でした。そして最後の謎が解けたとき私は泣きながら笑っていました。

 

 はじめに書いたとおり電撃作品よりも違うレーベル色の強い作品です。この作品をよく大賞ににしたなと言うのが率直な感想です。しかしそのおかげで私はこの書籍を手に取る事が出来たのです。審査員の方々は英断だったのではないでしょうか。このお話を世に送り出してくださり本当にありがとうございます。今後も素敵なお話と巡り会えますように。